なぜ談合が起こるのか?

実際の事例をご覧いただきましたが、では、なぜ談合が起こるかを考えてみましょう。そこには、管理組合側の問題点もあるようです。

※私のブログ「マンション大規模修繕工事における談合の実態について(2)」からの転載・加筆記事です

管理組合特有の組織と運営方法

談合が起こりやすい理由の一つに、管理組合の組織と運営方法があります。下の表をご覧ください。管理組合と民間の会社の一般的な比較をしてみました。

  管理組合 民間の会社
①構成員 管理組合員 株主
②最高意思決定機関 管理組合総会 株主総会
③業務執行・基本意思決定 理事会 取締役会
④役員選出方法等 輪番制・義務的・任期1年 特定の人物・複数年任期
⑤役員の能力 ほとんどが素人 プロの集団で実力者揃い
⑥責任体制 不明確 明確(刑事罰あり)
⑦報酬 無報酬 高額報酬

組織の形態を見ると、①から③まではよく似ています。しかし、運営に関する④から⑦までは全く異なります。
つまり、良いか悪いかは別にして、多くの管理組合の運営は、①輪番制(順番)で選ばれた役員が、②いやいやながら苦手なことを、③責任体制が不明確なまま、④無報酬でやらされている、ということです。

ですから、大規模修繕工事のような大きな事業を担当することになった理事や専門委員は、①なるべく面倒なことはやらず、②責任がこの身に降りかからないように発言し、③組合員からも文句をいわれないように行動して、④早く終わらせて辞めたい、が本音です。

その結果、次のようなことを考えます。

  • 専門的知識がないので、全体的な進め方の指南役として設計事務所や管理会社を頼ってしまう(場合によっては、いいなりになってしまう)。
  • 特定の個人(組合員や理事の関係者)の関与を極力避けるため、クレームが付きにくい公募方式や入札形式を採用する
  • 設計事務所や工事会社を選定する際に、金額が一番安い会社に発注する

以上のような選択肢は決して間違っていないのですが、自分たちの頭できちんと考えずに、あまりにも形式にこだわりすぎるため、手順(手続)や見積金額だけで設計事務所や工事業者を選んでしまいます

ここに談合が入り込むすきができてしまいます

信用している関係者の裏切り行為

談合といえば、工事業者間で話し合ってインチキな見積書を提出する工事業者が一番悪いと思いがちですが、実はそうではありません

「本当の悪」は、裏で談合を取り仕切っている設計事務所や管理会社なのです。
本来、彼らは信頼関係を基盤とする民法上の委任(準委任)契約に基づき、管理組合のために業務を行わなければならない立場にあります。しかし、実態は、管理組合が気付かないことをいいことに、信頼を裏切る行為を繰り返し、多額のキックバックをかすめ取っています。

建設業界特有の事情といってしまえばそれまでですが、あまりにもあこぎなやり方だと思います。

また、談合が常態化しているこの業界では、やっている関係者らも自分たちは悪いことをやっているとは考えず、「会社の利益のためにはやむを得ない。」程度にしか考えていません。

つまり、お金をいただいている管理組合の利益のためではなく、自分たちの利益ために一生懸命になっているということです。

設計事務所や管理会社は管理組合の予算額等をすべて知っているわけですから、そのような関係者が工事業者と結託して裏切り行為を行うと、管理組合はたまったものではありません

冒頭にご紹介した談合の事例も、設計事務所が設計価格を業者に漏らしていることは明らかです。

また、裏切り行為をする人間が、理事会や修繕委員等、マンション内部にいる場合もあります。

管理組合は一見客

マンションのライフサイクルにおいて、外壁や屋上の大規模修繕工事は十数年に一度の周期で行います。また、給排水管の更新工事においては、一回限りの場合もあります。

これらのことを考えると、マンションの大規模修繕工事を生業としている設計事務所や工事業者にとっては、マンション管理組合はいわゆる「一見客」なのです。

ですから、そもそも「誠実に長い期間お付き合いをしたい。」という気持ちが希薄な業者にとっては、逆にありがたい存在です。マンションストックが増え続けている現在においては、大規模修繕工事を行うマンションは年々増加していますので、一発勝負で大儲けをすることができる「獲物」はいくらでもいるということです。くれぐれもご注意ください。

最後に、談合を防ぐポイントについて、次ページ(談合されないためのポイント)でご紹介して終わりとさせていただきます。

ノーリベート宣言!(マンション管理士事務所初)

当マンション管理士事務所では、「当事務所及び所員が業務に際し受領する報酬は、顧客からの報酬のみとし<、関連業者からのリベート・インセンティブ等は一切受け取らない。」という倫理規定と共に、業界初となる「No リベート宣言!もさせていただいております。