大規模修繕工事の談合とは?

残念ながら、マンション管理業界では相も変わらずマンションの大規模修繕工事において談合が繰り返され、被害を受けている管理組合が後を絶ちません。私のブログでも何度か触れていますが、改めて談合についてまとめてお伝えしようと思います。

※私のブログ「マンション大規模修繕工事における談合の実態について(2)」からの転載・加筆記事です

談合とは

下の表をご覧ください。これは私が過去にコンサルティングを行った大規模修繕工事における工事業者の見積金額一覧表です。
上の段が設計価格と各社の提出金額(単位は万円)、下の段は設計価格に対する各社の工事金額のパーセンテージです。

【表】大規模修繕工事の談合事例(工事業者の見積金額一覧)

どうでしょうか?
設計金額に対し、最安値は83.2%で、そこから少しずつ価格を上げ、最高値は100.8%となっています。いわゆる「横並び」という状況です。
8社の工事業者が各社の意思に基づいて見積りをしたら、金額がこのように一定の範囲にきちんとおさまることはまずありません。なぜなら、見積りを提出する時点の会社の事情が様々だからです。

  • 今期は、売り上げも少ないので多少無理をしてでもこの工事を受注したい。
  • マンションの規模も手ごろで、場所も会社の近くなのでぜひ受注したい。
  • 受注したくて応募したけれど、先に別の案件が受注できたので、予定していた現場代理人が足りなくなった。
  • 他の同業者から「この案件は、わが社が受注することになっているので降りてくれ」と言われたから今回は無理をせず「貸し」を作っておこう。

以上のような理由で、「横並び」はあり得ません。
では、どうしてこうなったのでしょうか?

それは、A社からH社までが設計価格を知ったうえで、全社で話し合い、見積金額を決めて提出したからです。つまり設計価格も漏えいしていたということです。

このとき、私は、公正な競争が行われていないと判断したので、管理組合にA社からH社まで全社を失格にしたうえで、同じ仕様と条件で別の会社から見積りを取得することを提案しました。

その結果、何とA社の金額より約3000万円安い見積りが出てきました。管理組合はびっくりしましたが、実際はその金額が適正な金額だったということです。

つまり、もし当初の見積一覧の中から一番安いA社に決めたとしても、管理組合は約3000万円も多く支払うことになっていた訳です。

マンション管理組合にとって、大規模修繕工事は十数年に一度の周期で訪れる大事業です。
検討から工事完了までに1年以上の月日を費やすほかに、多額の工事費用を支出して実施します。管理組合は、自分たちがコツコツとためた修繕積立金を無駄なく有効に使って良い工事をしてもらおうと考え、設計事務所や工事業者を信頼して業務をお願いします。
しかし、その期待を裏切ってこのような談合を行い、何千万(マンションの規模によっては何億)というお金を不当に巻き上げ、設計事務所にキックバックをしたり、談合に参加した業者たちで山分けをしたりするのです。

談合は、日本の建設業界特有のことだと昔からいわれてきましたが、最近は大手のゼネコンを中心に「脱談合」宣言をするようになってきました。しかし、実際は脱談合宣言が業界全体に行きわたっているわけでもなく、マンションの大規模修繕工事を専門とする業者間においては、全く改善は見られず、多くの管理組合が被害にあっている状況です。

そしてもっとひどいのは、管理組合の多くは、自分たちが被害にあったことを分かっていないことです。

これが、大規模修繕工事における談合の実態です。

それでは、具体的な談合事例を、次のページ(実際に経験した談合事例)で、さらに幾つかご覧いただきます。

ノーリベート宣言!(マンション管理士事務所初)

当マンション管理士事務所では、「当事務所及び所員が業務に際し受領する報酬は、顧客からの報酬のみとし<、関連業者からのリベート・インセンティブ等は一切受け取らない。」という倫理規定と共に、業界初となる「No リベート宣言!もさせていただいております。